週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「脳腫瘍手術」の解説を紹介する。

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 脳腫瘍(しゅよう)には多くの種類があるが、大きく良性と悪性に分けられる。種類別では髄膜腫が全体の約30%で最も多く、次いで神経膠腫(こうしゅ、グリオーマ)が25%、下垂体腺腫(せんしゅ)18%、神経鞘腫(しょうしゅ)10%となっている。

 治療方法はその種類によって異なる。なかでも神経膠腫は代表的な悪性脳腫瘍で、手術、放射線、化学療法などを組み合わせた治療がおこなわれる。残りの3種類は良性脳腫瘍のため、手術で全摘出できれば完治し、頭痛や視野障害などの症状も緩和する。下垂体腺腫の摘出には従来、唇の裏側を切開していたが、現在は鼻孔を経由して脳に触らずに腫瘍を摘出する経鼻内視鏡手術が主流だ。

 神経膠腫は手術で最大限の外科的切除をおこなうことが重要とされる。ただし、腫瘍は脳の内部から発生し、脳の深部へしみこむように広がっていくため、正常脳組織との境界がわかりにくく、手術で完全に取り除いたように見えても、残存した腫瘍細胞が増えて再発しやすい。神経膠腫には組織型があり、星細胞腫(せいさいぼうしゅ)と乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ)に大別されるが、乏突起膠腫は星細胞腫に比べてややおとなしく、化学療法が効きやすいとされる。

■可能なかぎり脳機能を温存するため、安全性の高い手術を実施

 脳腫瘍には他のがんのようなステージ分類はなく、I~IVまでの悪性度(グレード)に分類されている。良性腫瘍のほとんどはグレードIで、グレードII~IVは悪性脳腫瘍だ。

 可能なかぎり脳機能を温存し、安全性の高い手術を実施するため、患者の状態や腫瘍の局在、予想されるグレードに合わせ、術中ナビゲーション、術中電気生理学的モニタリング、覚醒下手術、術中画像診断、術中蛍光診断などの最新技術を駆使する病院も増えている。また、術中の局所療法として抗がん剤ウエファーの留置やレーザー照射などがおこなえる病院も増加している。

 摘出手術後におこなわれる病理診断で脳腫瘍の種類やグレードが確定すると、それにあわせて、再発予防のための放射線治療や化学療法が実施されることもある。腫瘍の種類・グレードによって、薬の種類や投与期間も異なる。

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できるだけ腫瘍を取り除くのが治療の基本