良性腫瘍で無症状の場合、治療のタイミングや手術方法はどう選択すべきだろうか。経過観察中、数年前より明らかに増大していたら、腫瘍の摘出手術を検討すべきと佐々木医師は言う。

「腫瘍が増大して静脈に癒着したりすると、手術の難易度や合併症リスクも高まります。これ以上大きくなると手術のリスクが高まると想定される場合は、できるだけ安全に手術ができる段階で摘出するのが望ましい。髄膜腫は細胞が活発に働く妊娠中に増大しやすいので注意が必要です」(佐々木医師)

 下垂体腺腫では現在、低侵襲な経鼻内視鏡手術が主流だ。プロラクチン産生下垂体腺腫においては、内服薬で治療できる。

「神経鞘腫は腫瘍が大きくなると脳幹を圧迫しやすく、命にかかわることもあります。大きい腫瘍であれば開頭手術が必要ですが、小さいものなら増大を抑制できるガンマナイフ(放射線治療)で、開頭せずに治療できる場合もあります」(篠山医師)

■神経膠腫は年間12例以上が病院選びの目安

 脳腫瘍での病院選びについて佐々木医師は、「神経膠腫であれば、月1例、年間12例が病院選びの目安」と話す。

「どの医師が実際に手術や治療をしているか、エビデンスのある化学療法など納得できる治療が受けられるかなどをホームページなどで確認するといいでしょう。再発時には、遺伝子解析後、個々に最適なゲノム医療を検討する病院も増えています。そうした総合力のある病院であることも重要です」(佐々木医師)

 悪性脳腫瘍の病院選びのポイントを篠山医師はこう述べる。

「放射線治療は通常、脳神経外科が放射線治療科と連携して実施します。両診療科が病院内で連携のとれている総合病院であれば、やはり安心です」

ランキングの一部は特設サイトで無料公開しているので参考にしてほしい。
「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

【取材した医師】
神戸大学病院 脳神経外科教授 篠山隆司 医師
慶応義塾大学病院 脳神経外科専任講師 診療科副部長 佐々木 光 医師

(文/石川美香子)

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

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