「しずる」の村上純さん(撮影/中西正男)
「しずる」の村上純さん(撮影/中西正男)

 自分には何ができるのか。新商品のような目新しさはないですし、かといって安定の定番商品という枠にはなっていない。若手でもベテランでもない自分が商品として手に取ってもらうためには何をすればいいのか。

 数年前から第7世代と呼ばれる若手が台頭してきたという話が出てきましたけど、最近になってまたその流れが変わってきたとも言われています。

 自分のことを変に持ち上げるなんてことではなく、本当ならば、僕らくらいの中堅というか、そういう世代は、実は一番「どうとでもなる世代」だとも思うんです。

“人気度”と“認知度”があると思っていて、正直、人気度はたくさん番組をやらせてもらっていた頃に比べるとないと思います。でも、ありがたい話、認知度はある。それがあるから、今回の本も書かせてもらえたわけですし。

 それこそ、池田がKAZMAに改名してキャラクターを変えたのも認知度があったことをフリに使っているもので、これまでの「しずる」池田というイメージがあったから、掛け算が成立すると思うんです。いきなり若手があんなキャラクターで出てきても、興味を湧かせることは難しいでしょうし、そこは認知度という武器があってのことだろうなと。

 認知度はある。でも、定番商品にまではなっていない。本当は僕らくらいの世代が一番動きを見せやすいんだとも思うようになってきました。

 よく歴史の年表なんかで、特に何もない時期は“~”みたいなニョロニョロがついてたりしますけど、実はあのニョロニョロにも意味があるんですよね。

 特に目立ったことは起こってないかもしれないけど、そこによって培われているものがある。それが今の中堅だと思うんです。

 誰でも芸人を18年やってたら、これくらいの分厚さの本は書けると思います。その厚みがエンジンで、それをいかにしてふかせるか。それなんだろうなと。

 ……ほとんど笑いがないまま話をしてしまいましたけど(笑)、これが今の僕が本当に思っていることだし、これからやりたいことでもある。それは間違いありません。(中西正男)

■村上純(むらかみ・じゅん)
1981年1月14日生まれ。東京都出身。NSC東京校9期生。2003年に池田一真(現在はKAZMAに改名)と「しずる」を結成。独創的な設定のコントで注目を集め「キングオブコント」では09年、10年、12年、16年と決勝に進出した。初の自伝的エッセー「裸々」を3月25日に出版した。

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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