保育士の労働環境を巡っては、岸田文雄首相が昨年、「新しい資本主義」の看板政策として保育や看護、介護分野で働く人の賃上げに向け公定価格の見直しを進めた。その結果、今年2月、保育士らの賃金は3%程度(月額9千円)上がった。だが、多くの保育士は賃上げの実感を持てないでいる。

社会的評価上げていく

 福祉保育労副中央執行委員長の小山(こやま)道雄さんは、この状態が続けば、保育の質が低下すると警鐘を鳴らす。

「限られた保育士で園児を見なければいけないため、やれる保育が限られてきます。例えば、園児にけがをさせないよう、散歩には出ずに部屋でビデオを見せるようなことが起きています。保育の質が後退するのは明らかで、そのような保育園に就職した若い人は、保育とはそういうものだと思い、さらに質が低下していきます」

 小山さんは保育の質を上げるためにも、公的財源を充てて公定価格を見直し給与を全産業平均ぐらいにまで上げ、各園が必要な配置基準にするべきだと説く。そしてこう言う。

「保育士の仕事はいまだに、母親が家庭でやっていたことの延長を社会化した感覚が強いと思います。しかし、子どもや親を支援するソーシャルワーカー的な役割なども果たしています。まずは、保育士の社会的評価を上げていくことが大切だと思います」

(編集部・野村昌二)

AERA 2022年3月28日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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