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 近年保育士を辞める人が増加している。その主な要因として指摘されるのが、業務量に伴わない「賃金」。だが他にも課題は多く残されている。AERA 2022年3月28日号の記事を紹介する。

【図表】ブラック保育所?保育士の賃金の実態

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 賃上げだけでは保育士が抱える問題は解決しないと、東京都世田谷区の認可保育園に勤める、保育士歴10年の男性保育士(42)は指摘する。

「一番は、保育士の配置基準を増やすことです」

 都の基準では、0歳児クラスは子ども3人に対し保育士が1人。1歳児クラスは5対1、2歳児クラスは6対1、幼児クラス(3歳児以上)は20対1。しかしこの基準では通常の保育でも無理があり、事務作業は毎日残業しなければ追いつかない。思うような保育ができず疲労ばかりたまり、毎年のように数人は辞めていく。例えば、幼児クラスであれば10対1程度に見直してほしいという。

「給与がたくさん欲しくてこの仕事を選ぶ人はいないと思います。保育士の仕事がしたいからです。しかし、保育士不足という根本的な原因を変えなければ、問題の解決にはなりません」(男性保育士)

 男性と同じ保育園で働く女性保育士(51)は、「このままでは保育の現場が崩壊します」と訴える。コロナに感染したり濃厚接触者になったりして、休む保育士は少なくない。昨年、この女性保育士が勤める園ではパートも含め計5人の保育士がコロナで欠ける事態が発生。だが、職員の補充はなく、出勤できる職員だけで回さなければならなかった。

「まだコロナは続くと思います。コロナで職員が休んだ時は人を補充してくれないと、今のままでは保育園が回らなくなります」(女性保育士)

 さらに、保育士はコロナの感染対策は何もされていないと感じるという。世田谷区の基準では、幼児クラスの園児が感染した場合、保育士は濃厚接触者にならない。感染への不安を抱えたまま働かなければならないのだ。女性保育士は言う。

「私たちは感染してもいいから働けといわれているようで、守られていない感じがします」

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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