週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「膵がん手術」の解説を紹介する。
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膵がんは、かなり進行してからでないと症状が出ないため早期発見が難しく、見つかったときにはすでに周囲の血管や、肝臓、リンパ管など他の臓器に広がっていることが多い。そのため、最も治療が難しいがんの一つに数えられている。
膵がんはその時点で手術を選択すべきかどうかを表す分類(切除可能性分類)によって、大きく「切除可能」「切除可能境界」「切除不能」の3つに分けられる。一般的なステージでは、「切除可能」はステージ0、I、II、「切除可能境界」と「切除不能」のうち大きな血管に接したり巻き込んだりしている場合はステージIII、肝臓など他の臓器に転移している場合はステージIVに相当する。膵がんと診断された時点で切除可能と判断されるのは20%程度で、残りの約80%は切除可能境界または切除不能とされる。
■手術以外の治療の組み合わせが重要
膵がんの主な治療方法は、手術による切除と複数の抗がん剤を組み合わせた化学療法、放射線化学療法である。現在では、がんの遺伝子診断を元に免疫チェックポイント阻害薬の使用が認められ、分子標的薬の研究も進められている。
切除可能の場合でも、これまで20%程度だった5年生存率が、効果の高い抗がん剤が出てきたこともあり上昇している。切除不能と判断された場合でも、化学療法の効果が持続して手術が可能になるケースも増えてきている。
膵がんは、手術と化学療法など手術以外の治療を、いかにうまく組み合わせるかが重要となる。膵がんが疑われた場合には、大学病院やがんの専門病院など、膵臓専門の外科だけでなく抗がん剤投与を専門とする内科医や、放射線科医などのスタッフが揃っている病院で診断・治療を受けることが望ましい。