切除可能や切除可能境界と診断された場合は手術が選択されるが、がんの進行や転移、再発などを抑えるため、手術前に化学療法をおこなうことが多い。

 近年、切除不能と診断されても化学療法などの効果が持続し、手術が可能になるケースが少しずつ増えている。このような手術をコンバージョン手術という。

「切除不能局所進行膵がんの場合、手術が可能になる割合は病院によって異なりますが、16~30%程度と言われています。手術までには8カ月程度の化学療法をおこないますが、その間、その患者さんにとって手術をすることが本当に良い結果につながるかどうかを、慎重に判断します」(井上医師)

■最近は術前の運動プログラムなども重視

 コンバージョン手術は、化学療法などの効果で腫瘍が小さくなっているか、腫瘍マーカー(CA19-9)の値が正常値近くまで下がっているか、その状態を半年から8カ月以上維持できているか、体力的に手術に耐えられるか、などを精査し、可能かどうか判断される。

「体力も重要なキーワードです。最近ではからだが鍛えられていたほうが合併症も起きにくく、長期の経過が良いことがわかっています。そのため運動プログラムやサプリメントなどを取り入れた、術前のプレハビリテーションが重視されています」(平野医師)

 コンバージョン手術後は再発を抑えるために化学療法をおこなうが、患者の体力などの状態によりおこなわない場合もある。

 コンバージョン手術が難しい場合には、抗がん剤の種類を変えるなどしてQOL(生活の質)と治療を両立させながら、引き続き化学療法をおこなっていく。

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「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

【取材した医師】
がん研有明病院 肝胆膵外科 副部長 井上陽介 医師
北海道大学病院 副病院長 消化器外科II 科長 北海道大学教授 平野 聡 医師

(文/梶葉子)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より