週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

 膵がんは早期発見が難しく、ある程度進行して見つかる場合がほとんどだ。そのため、手術ができるかできないかが第一の選択肢となる。

 膵がんの進行度は、切除可能性分類(膵がんの進行度によって治療方法を選択する分類)により、切除可能、切除可能境界、切除不能に分けられる。切除不能に分類されるのは、がんが大きな血管に接したり巻き込んだりしている場合(局所進行)と、肝臓など他の臓器にがんが転移している場合(遠隔転移)である。 

 今回は、他臓器への転移はないものの大きな血管への浸潤があり、切除不能(局所進行)と診断されたケースを見ていく。

 膵臓の周囲には、門脈、腹腔動脈、上腸間膜動脈という三つの重要な血管がある。がん研有明病院の井上陽介医師は言う。

「門脈であれば、がんが多少浸潤していても切除は可能です。 腹部の臓器に血液や酸素を送る腹腔動脈に浸潤している場合は切除可能境界または切除不能に分類されますが、切除できる場合もあります。腸の大部分に栄養を送っている上腸間膜動脈にがんが半周以上接していたり巻き込んで変形していたりする場合は、切除不能と診断されます」

■「切除可能」は全体の2割程度

 また、患者の自立度や判断力なども手術の可否を判断する要素になる。北海道大学病院の平野聡医師は、次のように話す。

「膵がん手術はからだへの負担が大きいものが多く、術後の抗がん剤治療も比較的長期間に及びます。そのため手術を中心に治療をおこなうかどうかの判断には、年齢にかかわらず日常生活を活動的におこなっていること、かつ医療者側の説明を十分理解でき、治療についての判断が自分でしっかりできるかどうかも考慮する必要があります」

 診断時に切除可能とされるケースは、全体の2割弱程度にとどまる。切除不能と診断された場合は、複数の抗がん剤を組み合わせて使用するフォルフィリノックス療法や、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法などの化学療法がおこなわれ、放射線療法が加わることもある。

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化学療法で「切除可能」になることも