■外部照射の進歩で治療成績が向上
放射線治療における照射方法は、からだの外から放射線をあてる「外部照射」と、からだの内側に線源を入れて、がんの近くから放射線をあてる「内部照射」に分けられる。広くおこなわれているのは外部照射で、内部照射は子宮頸がんに対して膣から小さな器具を入れて治療する腔内照射や、前立腺に直接線源の針を刺す組織内照射など、対象は限られる。両者を組み合わせることもある。

治療成績を押し上げてきたのは、外部照射の進歩によるところが大きい。国立がん研究センター東病院の秋元哲夫医師はこう説明する。
「放射線治療では、放射線をがん細胞にあてることで遺伝子にダメージを与え、死滅させます。効果を高めるには、がんにしっかりと放射線を集中させる必要がある。同時に、副作用を軽減するために、がんの近くにある正常組織に可能な限り放射線があたらないようにすることが重要です。ここ30年ほどの間に新しい照射法が開発され、照射や検査の機器も高機能化し、精度の高い外部照射ができるようになりました」
かつての放射線治療はX線写真でがんを平面で捉えて2方向から放射線をあてる2次元照射だったが、1980年代に治療計画にCTが導入され、ビーム(光線)の形を自由に変えられる技術が普及したことで、「3次元原体照射(3D-CRT)」が実現した。3次元原体照射はがんを立体的に再現し、その大きさや形に合わせて多方向から照射するので、周囲の正常組織にあたる線量が抑えられ、より多くの線量をがんに集中できるようになった。現在は3次元原体照射が一般的な方法となり、最も多く用いられている。
これをさらに進化させたのが、90年代に登場した「強度変調放射線治療(IMRT)」だ。IMRTは、コンピューター制御でビームの中の線量強度を場所によって変える。これを多方向から照射することで、病巣が小さかったり複雑な形をしていても、病巣にのみしっかりと線量を集中させることができる。