大学院を修了後、トヨタ自動車にエンジニアとして勤務した。当時は高級車レクサスのブランドが立ち上がり、世界一の販売台数を目指して働く日々。だが一方で、「この先グローバル競争が激化すれば、誰が幸せになれるのか」という疑問も心の中でくすぶっていた。
そんな折、海士町を旅する機会があり、町民同士がフラットに交わりながら、生き残りをかけて島おこしに挑む姿に心を打たれた。
「『競争』ではなく『共創』によってイノベーションを起こせたなら、新たな社会のあり方を広めるきっかけを作れるのではないかと感じました。その気持ちは、今も変わりません」
今、力を注いでいる事業のひとつが出版だ。「離島から生まれた出版社」をキャッチフレーズに「海士の風」を設立。最初に出した太刀川英輔さんの著作『進化思考』は、デザインや発明の仕組みを生物や自然の進化から探る内容で各方面から注目を集め、発行部数が3万部を超えるヒットとなった。
本を通じ、「島から世界に知恵を発信していきたい」と意気込む。(本誌・松岡瑛理)
※週刊朝日 2022年4月8日号