「さわやかで好感度の高い人ばかりの集まりって、冷静に考えたらおかしいですよね。さらに、集まりに参加すると魅力的な仕事や立場の社会人が現れる。そんな団体が、そうそうあるはずありません。ただ、新入生は好感度にだまされてついていってしまったり、社会人を『すごい人たち』と信じ込んでしまいがちなのです」(渡辺弁護士)

 勧誘されても、その日はついていかない。学生課などに相談する。団体のことをネットなどで調べる、などマニュアル的な対策はあるが、冷静に実行できる新入生はなかなかいないだろう。

 実際、全国の大学が学生へのカルト宗教の勧誘に危機感を強めている。

 例えば、多くの大学がカルト対策として視聴をすすめている大阪大学の公式YouTube。一人で歩いている学生を信者が「待ち伏せ」し声をかける。何気ない授業の話から就活の話題に入ったころ、大学OBを名乗る信者が偶然を装って登場、就活のアドバイスをすると称して学生とLINE交換し個人情報を入手する、などの勧誘被害事例を紹介している。

 法政大学はホームページで、カルト宗教に目立つ手口として「集まりに参加した次は、セミナーに誘われる」というケースを紹介。カルト宗教に入信し、脱会したものの、学業を続けられる精神状態ではなく退学せざるを得なかった学生がいたとしている。東京大学は、危険な団体がSNSでハッシュタグ「 #春から東大」 をぶら下げて情報発信していると注意喚起している。

 では、学生が“カモ”にされないためにはどうすればいいのか。

 渡辺弁護士は最も手近な対策として、「おしゃべり」を挙げる。

「勧誘されたり集まりに参加したら、そのできごとを必ず誰かに話してください。相手は友達でも親でも、同じ新入生でもいい。相談ではなく、ただのおしゃべりでいいんです。直接話せないならLINEなどでも構いません」

 自分はいつの間にか舞い上がってしまっていても、冷静な第三者は何か変だと気づいて指摘してくれるケースが多いのだという。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?
次のページ
周囲から切り離そうとする