「カルト宗教は学生一人をターゲットにして取り込んでいくので、誰かに話されることを嫌がります。誰かに話したと伝えたり、次に会うときに友人などを連れて行くと標的から外す可能性もあります」
新入生らを狙うのは、カルト宗教だけではない。「マルチ商法」の勧誘も活発だ。
先輩などから「かんたんにお金もうけができる」と持ちかけられ、投資のノウハウが入っているとされる数十万円のUSBの購入を持ちかけられる。払う金がないと「すぐに返せる」などと言いくるめられ、貸金業者に連れていかれる。
さらに、USBを売って仲間を増やせばもっと稼げるとうながされ、いつのまにか被害者だった自分が加害者側に立っているケースも少なくない。カルト同様、SNSで「#春から〇〇大」のハッシュタグなどを狙って接触してくるのも、近年増えている手口だ。
マルチ商法についても各大学がホームページなどで啓発しているが、例えばこうした被害事例がある明治大学は「警戒心が薄く、はっきりと断れない学生が狙われやすい傾向がある」と説明する。カモになりそうな学生を見定めているのだろう。
出会いの春。魅力的な人たちばかりの集まりに誘われたり、飛びつきたくなるもうけ話を持ちかけられる場面があるかもしれない。
渡辺弁護士はこうも指摘する。
「『もう子供じゃないから親や周りにいろいろ言われたくない、自分の道は自分で決めたい』。勧誘側はそうした若者の心理を熟知し、周囲から切り離そうとするのです」
心のどこかで“自分も狙われるかもしれない”という気持ちを持ちながら、新生活を楽しんでほしい。(AERAdot.編集部・國府田英之)