もう一つ、なぜその季節の言葉とされているのかわからぬものも多い。
「ぶらんこ」もその一つ。春の季語で、雰囲気として春ののどかな光景に合っていると思えるのだが、なぜ秋ではいけないのか。中国では鞦韆(しゅうせん)とも言うが。
これに類した言葉は他にもあり、なぜこの季節?と疑問を持つこともある。
現在、戦争のさなかにあるウクライナでも季節季節に合った表現があるという。
だいたい北海道ぐらいの気温だというから、今は人々はまだダウンや毛皮に身を包んでいるが、四月には、花咲き芽吹きの季節を迎える。季節はいつだって忘れずに訪れ、人々は野に出て自然とたわむれる。そんな日が一日も早く訪れることを望みたい。
やはり内戦で人々が傷ついたシリアの砂漠でも春、雨が降ると砂漠に一面に淡い色の小さい花が咲いた。紫、黄、白、ピンク一面の花畑に人々は弁当を持って、砂漠でお花見をしていた。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2022年4月15日号