坂本花織/合計236.09点で、女子シングルの金メダルを獲得した。SP80.32点、フリー155.77点もともに1位だった(International Skating Union via Getty Images)

■来年はノーミスで優勝

 鍵山優真(18)は2度目の世界選手権を北京五輪銀メダリストとして迎えた。

「自分の期待値がすごく上がったというか、もっといいものができると自分で思い込んじゃっていた」

 SP2位で迎えたフリー。

「緊張で力が入らなくて」

 トリプルアクセル(3回転半)が1回転半になるなどジャンプでミスが出た。一方で、SP、フリーともに4回転サルコーで出来栄え点(GOE)を4点台に乗せるなど、確かな成長も見せた。

 初出場だった昨年の大会、北京五輪と銀メダルが続く。

「徐々に悔しく思えてきたのが、一つの成長かなと思います」

 世界一への思いも強くなった。

「次は絶対に取りたい。来年はノーミスで優勝したい」

 埼玉で開催される1年後の世界選手権で目指すものがはっきりした。

■2位に18点以上の大差

 前回大会で表彰台を独占したロシア勢が不在の女子は、北京五輪銅メダルの坂本花織(21)が優勝候補の大本命に挙げられた。

「(五輪後は)完全に燃え尽きた。何を目標に頑張ればいいのかと、すごく考えて悩んでしまった」

 調子はどん底だった。

 それでも「五輪がまぐれだと言われたくない」という思いが、自分の背中を押した。大会直前にプログラムをノーミスで滑れる状態に戻した。

 SPは初の80点台。得点を知ると、思わず立ち上がった。

「『未知の世界へようこそ』みたいな感じ」と喜んだ。

 フリーは優勝の重圧に加え、2位以内に入らなければ、来季の日本の世界選手権の出場枠が2に減る状況での出番となった。

「怖くなりすぎて」

 演技前に泣いた。中野園子コーチから「必死ほど強いものはない」と励まされ、リンクへ向かった。

 気持ちを切り替えて、

「最後の最後まで全力疾走で走り抜け、みたいな感じで」

 スピード感あふれるスケーティングで不安を吹き飛ばした。ジャンプはすべて着氷。自己ベストを更新し、2位に合計で18点以上の大差をつけて初めての金メダルをつかんだ。

「最後の最後までやりきれて、このメダルにはすごい価値がある」

 表彰台ではうれし涙を流した。

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