
■来年はノーミスで優勝
鍵山優真(18)は2度目の世界選手権を北京五輪銀メダリストとして迎えた。
「自分の期待値がすごく上がったというか、もっといいものができると自分で思い込んじゃっていた」
SP2位で迎えたフリー。
「緊張で力が入らなくて」
トリプルアクセル(3回転半)が1回転半になるなどジャンプでミスが出た。一方で、SP、フリーともに4回転サルコーで出来栄え点(GOE)を4点台に乗せるなど、確かな成長も見せた。
初出場だった昨年の大会、北京五輪と銀メダルが続く。
「徐々に悔しく思えてきたのが、一つの成長かなと思います」
世界一への思いも強くなった。
「次は絶対に取りたい。来年はノーミスで優勝したい」
埼玉で開催される1年後の世界選手権で目指すものがはっきりした。
■2位に18点以上の大差
前回大会で表彰台を独占したロシア勢が不在の女子は、北京五輪銅メダルの坂本花織(21)が優勝候補の大本命に挙げられた。
「(五輪後は)完全に燃え尽きた。何を目標に頑張ればいいのかと、すごく考えて悩んでしまった」
調子はどん底だった。
それでも「五輪がまぐれだと言われたくない」という思いが、自分の背中を押した。大会直前にプログラムをノーミスで滑れる状態に戻した。
SPは初の80点台。得点を知ると、思わず立ち上がった。
「『未知の世界へようこそ』みたいな感じ」と喜んだ。
フリーは優勝の重圧に加え、2位以内に入らなければ、来季の日本の世界選手権の出場枠が2に減る状況での出番となった。
「怖くなりすぎて」
演技前に泣いた。中野園子コーチから「必死ほど強いものはない」と励まされ、リンクへ向かった。
気持ちを切り替えて、
「最後の最後まで全力疾走で走り抜け、みたいな感じで」
スピード感あふれるスケーティングで不安を吹き飛ばした。ジャンプはすべて着氷。自己ベストを更新し、2位に合計で18点以上の大差をつけて初めての金メダルをつかんだ。
「最後の最後までやりきれて、このメダルにはすごい価値がある」
表彰台ではうれし涙を流した。