東尾修
東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、完全試合を達成した佐々木朗希選手(20)を称賛する。

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 ロッテの佐々木朗希投手が4月10日のオリックス戦で史上16人目の完全試合を達成した。1994年の槙原寛己(巨人)以来28年ぶりだった。20歳5カ月はもちろん史上最年少。それだけじゃない。13者連続奪三振のプロ野球新記録に、1試合最多タイの19奪三振。初完投が完全試合とは恐れ入った。

 これだけ完璧な完全試合は珍しいだろう。危ない打球や、守備に助けられたという部分はまったくなかった。これなら、近い将来、ノーヒットノーランや、2度目の完全試合もやってしまうかもしれない。そんな期待を抱かせる投球だった。

 最低3球を要する「三振」を19個もとりながら、105球。ストライク率は78%だった。もちろん、ボールゾーンに沈むフォークボールがあるので、厳密にストライクゾーンに来た球は6割程度だろうが、3球に2球がストライクゾーンに来るのであれば、打者は初球から決め打ちをしてくる。そうなるとバットとの「衝突」も本来は増えるものだ。打者のミート技術は1年ごとに確実に上がっている。そんな令和の時代の野球で、佐々木朗希は当てさせなかった。直球だけに絞って打っても当たらない。究極のピッチングスタイルと言える。

 四回にプロ野球新記録となる10者連続三振となった吉田正尚を迎えた場面。三振をしない選手として有名な吉田正に対し、2球連続カーブを投じた。2打席目にこれを見せたのは大きいね。3打席目、吉田正の頭には、直球、フォークボールに加え、第3の球種もどこかに残っていたはずだ。18歳の松川虎生捕手が考えた球種選択だそうだが、結果的に大記録のターニングポイントとも言える配球だった。

 今後はより各球団は「狙い球」を明確にしてくる。ここからが本当の勝負だ。打者は目線を上げ、フォークボールを捨てることもやってくる。その時に、この試合では2~3球しか投げなかったスライダーとカーブが生きる。この2球種のレベルも上がってくれば、さらに一段上に行ける。左打者に対してのチェンジアップなどは、その先の話である。新しい球種を覚えることで、邪魔になってしまう時があるから。球威、制球力、今持っている球種に磨きをかけていくことが先決だ。

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