4月1日、日米の議員が連携して、「米『核兵器先制不使用』宣言を支持する日米プログレッシブ議員連盟共同書簡」を日米政府に提出したのである。日本39人、アメリカ35人の議員によるこの書簡は、バイデン大統領と岸田首相に宛て、アメリカの核の先制不使用宣言を進めるよう求めている。日本側は、立憲民主党などの野党議員でつくる日本プログレッシブ議員連盟(会長:中川正春元文部科学大臣、以下、「プログレ議連」)に属する議員であり、米側も米プログレ議連(日本で「進歩派」と報じられるグループ)を中心に、バーニー・サンダース議員、エリザベス・ウォレン議員など大物議員が名を連ねている。
実はアメリカにおいても、核兵器の認識に変化が起きている。20年8月に公表されたNHKによる18~34歳の米国民約千人を対象にしたアンケート調査によれば、核兵器の必要性についての問いに対し、70%余りが「必要ない」と回答。先の書簡は、そうしたアメリカの世論を反映したものとも評価できるだろう。
なお、この日米共同書簡は、筆者の知る限り、この規模の日米議員の連携としてはテーマを問わず初の試みであり、歴史的出来事である。アメリカの進歩派は、米議会下院で与党民主党の半数近くを占めるなど極めて大きな影響力を持つが、看板政策は最低賃金や国民皆保険などの国内政策であり外交・安保の発信は少ない。
しかし、今回、被爆国日本の議員たちが声を上げ、核の脅威を痛感した米議員たちがこれに呼応して、大きな一歩を踏み出した。
核軍縮に理解あるバイデン政権であっても、核廃絶からはほど遠い。日本政府も、被爆国の立場を利用しながらも、核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加も見送る二枚舌であり、核廃絶に向けた実のある具体的努力は実際のところ何も行っていない。
しかし、核廃絶に向けた道のりには、核大国アメリカと被爆国日本の協力が極めて大きな意味をもつ。そんな中で、日米の議員同士が新たな独自の外交チャンネルでつながり、共に動いていく。この書簡は今回の核の先制不使用宣言についてのみならず、将来の他の動きにも続く大きな一歩である。
ウクライナ侵攻により、日本国内は慌てふためき防衛力拡大一色の議論となっているが、ウクライナ侵攻開始から2カ月が経とうとしている今、私たち日本が国際社会の平和の実現に向けてどのような役割を担うべきか一歩立ち止まって冷静に考えることが何よりも重要である。