しかし、冒頭のリリースのとおり、バイデン政権はNPRに核の先制不使用宣言(唯一の目的宣言)を含めなかった。日本の被爆者を含め、核廃絶や核軍縮を期待する世界の人々には大きな失望が広がった。

 背景には、ウクライナ情勢があり宣言が難しかったという点もあるだろう。なお、日本は、この間に広島出身の岸田文雄氏が首相となり、岸田首相は「核廃絶」を掲げるとされているが、 岸田政権も核の先制不使用宣言について懸念を示し続けている。

■日本の役割

 この2カ月というもの、残念ながら国際政治の中で核兵器のウェートが上がってきている。ウクライナ侵攻直後、ロシアのプーチン大統領は、核戦力を含む軍の核抑止部隊に任務遂行のための高度な警戒態勢に移行するよう指示を出し、ウクライナに対して核兵器の使用をちらつかせる威嚇を行った。日本国内でも、これは被爆者らの怒りに火をつけ、広島・長崎をはじめとした各地で「核を二度と使うな」「核による威嚇も行うな」との声が上がっている。

 他方、そのロシアの動きを見て、安倍晋三元首相から、アメリカの核兵器を同盟国で共有する「核共有」を日本でも議論すべきだという意見が出され、何人もの国会議員からこれに同調する声が続いた。岸田首相は、ただちに非核三原則を指摘してこの可能性を否定したものの、その後も議論は続いている。

 もっとも、今、この瞬間も、米ロの核戦争、そして第三次世界大戦が始まりかねない現実を私たちは目の当たりにしている。今回のウクライナの惨劇からの教訓はいくつもあるが、そのうちの大きな一つは、戦争の開始を止める、あるいは、戦争になったときの被害を少しでも抑えるためには、核軍縮を含む軍縮が世界規模で行われなければならないということである。被爆国日本のなすべき役割は、核拡散につながる「核共有」の推進ではなく、核廃絶を掲げて国際社会に訴え、その道筋をつけるために世界をリードすることである。

■日米議員の共同書簡

 核廃絶を現実のものに少しでも近づけるには、核の役割を低減する試みが重要である。

 バイデン政権が、冒頭の「核の唯一の目的宣言は出しません」とのペラ1枚のリリースを発表したその数日後、日米の議員が連携して、これに明確に物申した。

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