4月24日、韓国から日本の政財界に人脈を持つ国会議員や元外交官、専門家ら7人からなる代表団がやって来る(21日の本稿執筆時点の予定)。来月10日に大統領に就任する尹錫悦氏の対日政策を理解するうえで極めて重要な機会だ。
日韓両国にはそれぞれ難しい事情がある。仮に尹氏が日本との良好な関係を望んだとしても、日本側に譲歩すれば、国会で多数を握る政敵「共に民主党」に集中砲火を浴び、世論の反発も必至だ。一方、岸田文雄首相が韓国に譲歩しても自民党タカ派が反発し、嫌韓ムードが高まる世論の批判も避けられない。
これまでのところ、最大の懸案である慰安婦と徴用工問題については、両国とも極力直接的な言及を避けて、出だしで関係改善の可能性を断つことは避けようとしているが、いつこの問題に火がつくかはわからない。
一方、尹氏はタカ派で、中国や北朝鮮に非常に厳しい姿勢を示す。現職の文在寅大統領が中国や北朝鮮に宥和的で、時として日米には「裏切者」と映ることもあったのに比べ、尹氏の方が文氏よりはるかに話ができる相手になるとの期待が広がっている。足並みの乱れが目立った両国の安全保障面での関係が好転すれば、さらに日韓関係の包括的な改善にもつながるかもしれない。そうなれば、両国だけでなく東アジア全体の利益になる。
しかし、実は、そこに大きな落とし穴が隠されていることにマスコミは気付いていないようだ。それは、尹氏が中国や北朝鮮に厳しい態度をとることを最も歓迎している米国の存在だ。
そう言うと、日本の同盟国である米国が喜ぶことの何が問題なのかと思うかもしれないが、事はさほど単純ではないのだ。
米国の最大の「敵」である中国は、GDPでロシアの10倍、日本の3倍もある超大国だ。加えて、東アジアでの軍事力でも米国はすでに中国に後れを取ったと言われている。相対的に力の衰えた米国だけで中国封じ込めができる状況ではない。しかも、ウクライナ危機は長期化の様相を深め、米国はロシアとの対決にも力を削がれる。