──コンプレックスだったという声の仕事も。どのように強みに?
周囲の肯定だと思います。人が認めてくれる機会やプラスの言葉をたくさんいただくことで、きっと強みに変わっていく。私、人から言われた言葉を自分のなかに“貯蓄”するのが好きなんです。自信にまでつながったかはわからないですけど、原動力になるぐらいはたまったんだと思います。だからその“貯金箱”を割って、仕事に使っている、という感じですね。
──声優を務めた「映像研には手を出すな!」の反響は? 声、ピッタリでした。
うれしいです。……あ、もうちょっと浅草氏(伊藤さん演じる主人公)っぽく受け答えすればよかったですね(笑)。
始まる前に原作を読んだのですが、正直、声の想像がつきませんでした。「何で私なんだろう」ってすごく思いましたね。でも、放送後に「この声しか考えられない」とか「これが正解だ」って感想を聞いて、やっと自信がついてきました。
──昨年2月、「役者人生の第2章が始まった」とおっしゃっていました。
そのときは、予想外の立ち位置の役をいただく機会が多かったんです。「ちょっと思い出しただけ」や、舞台でもヒロイン役を務めて、「なんだこのヒロインイヤーは!」と思って(笑)。「何で?」という戸惑いと「やらなきゃ」という義務感との間での葛藤というか、迷いがあるときでした。だから“第2章”って自ら区切ったんです。「自信ない」じゃなくて、いただいた役を全うする。あとは責任を持つ。ある意味、自分の尻をたたく言葉でもありました。やることも考えることもいままでと一緒ですが、プラスアルファなにをしていけばいいのかっていう、新たな課題が浮かび上がったのが第2章ですかね。
──第2章どうですか?
どうなんでしょうね(笑)。もがくっていうか……、戦っているときですね。20代はとりあえず戦う。カッコ悪くていいのかなと思います。
いとう・さいり 1994年、千葉県生まれ。2003年、9歳でドラマデビュー。ドラマ、映画、舞台、声優などで幅広く活躍。8月7日から舞台「世界は笑う」(作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ)に出演。主演ドラマ「ももさんと7人のパパゲーノ」(NHK)が8月20日放送。
(構成/本誌・唐澤俊介)
※週刊朝日 2022年8月5日号