さらに、国民を取り込む最大の理由は別にある。国民を支持する連合傘下の民間労組のうち、自動車総連やUAゼンセン、電機連合、電力総連といった、公称で20万~180万人もの構成員がいる大規模労組を引き込むためだ。旧同盟系を中心とする民間労組の支援が得られれば、政権の安定感は確実なものになる。
また、国民民主が東京選挙区で共闘する地域政党「都民ファーストの会」が参院選後に国民民主と合流すれば、小池百合子都知事との連携も可能だ。
前出の自民党幹部は「これまでは安倍晋三元首相と菅義偉前首相との人間関係で、維新が政権運営に協力してきた。岸田政権独自の『自公国』の枠組みを作れれば、党内の他勢力に気兼ねなく動けるようになり、政権運営の自由度が高まる」と話す。しかも大規模労組と小池知事も味方につくなら「それぞれが作用し合い、さらに盤石な政権基盤となる」(同幹部)。
その先に待っているのが悲願の憲法改正だ。自民党の有志議員による「憲法改正推進国会議員連盟」の会長を務める衛藤征士郎・元衆院副議長は「憲法審査会で議論を重ね、各党議案を出す機が熟した。緊急事態条項を最優先に、遅くとも来年の通常国会で発議したい」と前のめりに語る。
前出の自民党関係者によれば、緊急事態条項の「議員任期延長」案に絞って提案するという。立憲の西村智奈美幹事長は「改憲しなくても、参院の緊急集会で事足りる」と反論するが、自公国に維新も含めた「改憲政党」で衆参3分の2の議席を占められたらかなわない。
「首相はこれを皮切りに毎年国民投票を行い、参院の合区解消や教育環境の充実などの改正を行い、いずれ9条に手をつける方針なのではないか」(自民党関係者)とささやかれる。いずれにせよ、戦後70年以上手をつけられなかった憲法改正が現実味を帯びるかは、参院選の結果にかかっている。(本誌・亀井洋志、村上新太郎、佐賀旭)
※週刊朝日 2022年5月6・13日合併号より抜粋