佐々木朗希は「納得しての交代」と話していたが、本音は投げたかっただろう。そうでなければ投手じゃない。ただ、今は成長途上である。さらに大きなスケールを身に付けるための我慢と自分に言い聞かせていると思う。もっと体力がつき、100球を何試合も投げても回復できる強さを得ることだ。1軍の舞台で相手を圧倒できるだけの投球ができるようになった。今は自信もつきつつあるだろう。ただ、だからといって一足飛びに体が強くなるわけでもない。まして、160キロが平均球速という投手は過去にいないのだから。すべてが手探りの育成である。
ファンのみなさんも、もう少し待ってもらいたい。2試合連続完全試合のチャンスは二度と訪れないかもしれないが、それよりも私は、日本球界を牽引(けんいん)し、いずれは世界ナンバーワンの投手になる姿が見たい。その姿を見るために、もうしばらく辛抱しつつ、温かい目で見ていきたい。
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
※週刊朝日 2022年5月6・13日合併号