ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「セックスシンボル」について。
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「セックスシンボル」という言葉がありますが、「誰に誰が性的興奮を覚えるか」なんてことは、本来とても個人的な懸案であり、わざわざ世間一般がその「象徴」を定めるなど、考えてみたらおかしな話です。
「セックスシンボル」と聞いて、真っ先に思い浮かべる人と言えばマリリン・モンローでしょう。私のように女体に何の興味のない男性も、はたまた異性愛者の女性ですら、「モンローはセクシー」「モンローはエロい」というのが、まるで初期設定の段階でインストールされているかのようです。彼女の場合は絶頂期に亡くなったため、より普遍性と永久性を持っていますが、国内外問わず一度セックスシンボルになった人は、ほとんどが年老いたり風貌が大きく変化したりしても、その称号を剥奪されることはないというのも興味深い。旬か否かがすべてであり、永遠とは無縁の「アイドル」とは大きく違うのが、「セックスシンボル」の妙です。
ここで日本における「セックスシンボル」を思い浮かぶ限り挙げてみましょう。由美かおる、西川峰子、名取裕子、アグネス・ラム、かたせ梨乃、飯島愛、飯島直子、石田えり、三原じゅん子、アン・ルイス、津川雅彦、沢田研二、黛ジュン、西城秀樹、田原俊彦、本木雅弘、木村拓哉、長瀬智也、山下智久、伊藤英明、吉田栄作、豊川悦司、細川ふみえ、寺田恵子(SHOW−YA)、YOSHIKI、朝丘雪路、優香、長澤まさみ、壇蜜。
私的な感情は一切抜きにして、自分の中にある客観性だけを頼りに列挙してみましたが、見事に今なお「セックスシンボル」の呼び声に異論は生じない人たちばかりじゃありませんか。恋心やときめきに「終わり」や「卒業」や「幻滅」は付き物。しかし性的興奮に関してはどうやら話が違うようです。ましてやそれが性の目覚めだったりした日には、その鮮度たるやまさに一生もの。もしかしたら、この世でもっとも「食いっぱぐれのない肩書」は、「セックスシンボル」なのかもしれません。