とは言え、今の世の中で率先して「セックスシンボル」たり得る存在になっていくのも時代錯誤です。これだけ「性的な目(消費目的)」が、男女問わずオープンになった現代において、かつてのようなむっつりとした欲求の上に成り立つ「性の最大公約数」というのは生まれにくくなってきています。ここ10年で、個人的にこの人は「(世間的に)セックスシンボルだな」と感じた男性は、西島秀俊さんと星野源さんぐらい。ご両人とも30歳・40歳を過ぎてセックスシンボル化したパターンです。
そしてもうひとり。私が「最後のセックスシンボル」と呼ぶ男がいます。斎藤工さんです。彼のどこか後ろ向きな佇まいや、自身や世間に対する苛立ちみたいなものが、私はとても好きなのですが、いつだったか彼が「僕は男版・壇蜜なのだと思う」と淡々と話しているのを聞いた時、その冷めた自意識に身震いしたことを憶えています。先日、斎藤工が「妊夫」になるドラマを観ました。「プロのセックスシンボル」だからこそできる役。己の値打ちにさしたる興味も持っていない男ほどセクシーな人はいません。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2022年5月6・13日合併号