チャドだけではない。ニカラグア、ルワンダ、レバノン、シリア、イラク、アフガニスタンと、世界中の武装ゲリラがトヨタのピックアップトラックを使用した。

「頑丈で壊れにくく、改造しやすい。さらにトヨタのサービス網は地球上のあらゆる場所に広がっていますから、必要なパーツはどこでも手に入る。メジャーな市販品の入手性のよさというのは、軍用として使う側にとっては大きなメリットです」

■身近なスマホも軍用端末に

 井上さんによれば、最近の戦場で民生品の使用が著しいのは情報通信の分野という。

「いまの戦場は情報通信技術の支えが不可欠となっています。戦地でサーバーを立ち上げてネットワークを組み、指揮統制をするのが当たり前になっています。それらの機器は丈夫には作られて、外見はいかにも軍用ですが、中身は民生品と同じ技術で構成されているのが普通です」

 さらに井上さんは、こう続けた。

「市販のカメラをドローンに積み込めば偵察用ドローンになるように、情報通信技術がからむ製品の多くはアイデア次第で軍事利用が可能ですから、いま『軍用品』と『民生品』の境界は非常にあいまいです。民生品であっても、ソフトウェア次第で軍用に変わりますから」

 もっとも身近な例がスマホだ。

「Androidのスマホにソフトウェアを入れるだけで軍用の情報末端になるわけです。作戦行動の目標物、近くの敵軍や友軍の位置情報などをスマホの地図上に表示する。戦闘部隊は他の部隊とリアルタイムで作戦行動を調整したり、スクリーンをタップするだけで空爆による支援を要請できたりする」

 専用の情報末端をつくるには多額の開発費用が必要だが、既存のスマホに利用してソフトウェアを入れるだけですむなら、ずっと安くできる。

「耐久性では専用品より劣りますが、安いので壊れたら交換すればいい。スマホであれば、すでに使い慣れているので、教育の手間がかからないという利点もあります」

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ドローン提供は「民生品」なのでOK?