2014年、韓国国防省は同国に侵入して墜落した北朝鮮の偵察用ドローン2機を公開。このドローンにはキヤノンとニコンのカメラが搭載されていたことも明らかにした。メモリーカードを再生すると、青瓦台(大統領府)を真上から撮影した画像が映し出され、韓国民に衝撃を与えた。
しかし、なぜ市販のデジタルカメラが軍事用に使われているのか?
「軍用にすべてを専用設計にしたら、開発するのにかなりの費用と時間がかかります。手っ取り早く市販品を流用して偵察機をつくり、目的とする情報が得られるのであれば、めちゃくちゃ安上がりなわけです。安価であれば、数を揃えるのも容易です。撃ち落されたら、また代わりを飛ばせばいい、という非常に割り切った発想で設計したら、このようなドローンができたわけです」
ちなみに、前述のキヤノンEOS Kiss X8iにはリモートコントローラーと接続するための端子が設けられているので、それを利用すればたやすく遠隔操作や事前の飛行プログラムに沿ったシャッターが切れる。
■「貧者の兵器」からの変化
「今回、ウクライナ国防省が公開した動画ではカメラが注目されがちですが、ドローンを操縦する管制機能やデータを受け取るシステムには民生品のパソコンが使われている事例が非常に多いです」
実際、アメリカやイスラエルの軍用ドローンの管制には、日本国内メーカーによる堅牢設計のパソコンが使用されているのを何度も目にしていると井上さんは言う。
かつて戦場における民生品といえば、「貧者の兵器」であり、主にゲリラ戦で用いられてきた。井上さんによれば、有名な例は「トヨタのピックアップトラックを使った、いわゆる『The Great Toyota War』です」。
この戦争は1980年代に起こったアフリカ・チャド内戦のことで、政府軍と反政府勢力の双方が改造して武器を乗せたトヨタのピックアップトラックを使って戦闘を繰り広げた。