民生品のつもりで販売した商品がある日、どこかの戦場で兵器として使われる――この先、「そんなケースが増えるでしょう」と井上さんは指摘する。
ウクライナ侵攻でロシア軍のドローンに搭載されていたキヤノン製品についても、メーカーは、こう述べている。
<このようなカメラは、どなたでも購入いただける市販製品のため、第三者がどのように再利用または使用されるのかということまでは、把握することが難しいのが実情です>(キヤノン広報部)
■ドローン提供は脱法行為か
4月19日、岸信夫防衛相は自衛隊が保有するドローンをウクライナに提供することを発表した。このドローンは「市場で買える民生品」なので、「防衛装備移転三原則」で海外移転の規制対象とする「防衛装備品」にはあたらないと説明した。また、防衛省の石川武報道官は「国際約束の中で、目的外使用されないことを確認している」と強調した。
しかし、井上さんはドローンをウクライナに提供することに理解を示しながらも、「これを民生品だからOKです、というのは、違法ではないにしても脱法行為になりはしないか」と懸念を示し、こう続ける。
「民生品の名目で、なし崩し的に兵器として使われる製品を戦場に送り、それを既成事実化してしまうのは感心できません。ドローンというのは民生品と軍用品の線引きが非常に難しい製品です。だからこそ、国民に対してきちんと説明して、正面突破して、制度化しておかないと、禍根を残すような事態になりかねないと思います。今後の武器輸出管理のあり方にも影響してくるかもしれません」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)