9232-2437 Quebec Inc - Parallel Films (Salinger) Dac (c) 2020 All rights reserved.
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──マーガレットの役作りはどのように?

「モデルとなったフィリス・ウエストバーグさんと一緒に仕事をした人や、彼女のアシスタントに会って話を聞いた。保管されているサリンジャーやフィッツジェラルドなどのファイルや書簡を、現在権利を持っている会社に足を運んで見せてもらった。彼らが使った文房具を見るだけでも感激したの。歴史を感じることができた。当時の作家と作品は芸術界の最高峰に位置し、作家とエージェントの関係も格式ばっていた。今はそうした関係性も変わったと思う」

──マーガレットは芸術を愛する繊細さと優しさを内面に秘めながらも、当時の業界で生きていくために、攻撃的な仮面を被る必要があったように映ります。

「全くそうだと思う。私の両親はニューヨークの出版界に多くの友人がいて、私も業界のそうした女性たちと会う機会が多くあった。彼女らは華やかで、タバコを吸い、お酒も飲む現代的でスタイリッシュな女性たちだった。マーガレットにもファイターのスピリットがあったと思う。仕事に献身的で、また自分の世界を守ろうとした。新しいもの、侵入してくるものに対して強い警戒心を持ったのも事実だと思う。そんな姿勢も理解できる」

──IT化が進み、媒体の形も変化し続けています。文学や出版界は生き延びられると思いますか?

「幼い世代が将来的に文学をどう受け入れていくかはわからない。両親が読書家であれば、子どもたちに読書を勧めてくれると思う。私は子ども時代、図書館に足を運び、いろんな本を借りて読書に多くの時間を割いた。当時は想像力を働かせるたくさんの自由時間があった。ニュースは新聞を読むぐらいで、ホワイトハウス内部のことなど知るすべもなかった。ところが、今は私自身も含めて、スマホで検索して世界で何が起こっているかを知ったりもする。アクセスできる情報が多すぎると、つくづく感じる」

──俳優として長いキャリアを築くのは至難の業だと思います。秘訣は?

「俳優のだれもが、『もう二度と役が回ってこないのではないか』という不安を常に感じている。撮影の最初はいつも、『どう演じようか』と悩む。それは俳優の仕事の一部なのだと思う。それでも演じられるという自信を持つことができるのは、文学を勉強したからだと思う。素晴らしい文学には、いつも素晴らしい女性のキャラクターが登場する。『したがって、女性が必要とされているんだ』と考えるわけ。その原則を信じたから、年を取ることについて不安になったことはなかった」

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