所属チームのアーセナルでも圧倒的な存在感を示しているブカヨ・サカ(写真/gettyimages)
所属チームのアーセナルでも圧倒的な存在感を示しているブカヨ・サカ(写真/gettyimages)

 今年の11月にカタールで幕を開けるサッカーワールドカップ。これまで多くのプレイヤーが大舞台での活躍をキッカケに世界的に知られることになったが、今年の大会では誰が名をとどろかせるのか――。

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 6月に大陸間プレーオフが残っており、まだ出場する32チームは全て決まっていないが、既にカタールへの切符をつかんだ29チームの中から、大ブレイクを果たしそうな選手をピックアップした。

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■ブカヨ・サカ(イングランド代表)

 2021年7月11日。ウェンブリー・スタジアムで行われたEURO2020ファイナル。“ホーム”の大歓声を浴びるイングランドはイタリアと1-1で120分を終え、PK戦へ。2-3と外せば負けが決定する状況で迎えた最後のキッカーは、この大会で目覚ましい活躍を見せていた19歳の若者だった。強烈なプレッシャーにさらされた彼のキックは、無情にもジャンルイジ・ドンナルンマが完璧にストップ。20歳にも満たない若者はあふれるものを抑えきれず、失意の涙を流しながら聖地を後にした――。

 あれから約10カ月、今シーズンのブカヨ・サカは新たなレベルに到達した。切れ味鋭いドリブルはさらに研ぎ澄まされ、一対一を止められる選手はそういない。前を向けばほぼ確実にチャンスを作り、また後ろ向きでもその強靭なフィジカルとテクニックで相手を背負いながら前を向いてしまう。さらに、プレミアリーグでは35試合消化時点で11ゴール6アシストをマーク。特に課題であったフィニッシュフェーズでの精度は著しく改善された。20歳にして名門アーセナルを牽引するアタッカーへと成長している。イングランド代表でも常連となり、予選では先発した3試合で3ゴール2アシストと着実に結果を残した。

 サカにとって、2022年大会は自身初のワールドカップとなる。ウェンブリーでの悲劇の後、激しい非難や人種差別にさらされたが、SNSで「全力を尽くすことを約束する」との誓いを立てた。それは今シーズン、ピッチ上で証明し続けている。この大会は、世界中にそれを示すチャンスだ。

 あのクリスティアーノ・ロナウドも、EURO2004では決勝で敗れ人目をはばからずに大粒の涙を流していた。当時の彼は19歳。同じ年齢で、同じような悲劇を経験している。それからポルトガル代表FWがどうなったのか、説明する必要もないだろう。つまり、サカも世界最高の選手になる切符を手にしているのだ。カタールの地で、このウインガーの一挙手一投足に目が離せない。

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サッカー王国でブレイク期待の選手は?