「60代でも、まだまだ元気で若く、新しいチャレンジをするというのは理想の生き方としてありますが、60代なりの老いの兆候や体の不調というのは誰にでも出てくるもの。少なくない人が年齢に関係なく、若さを保っている時代だからこそ、自分のイメージと現実のギャップに、想像以上に苦しんでいる人がたくさんいると思います」(香山氏)
老いるに老いられない時代。個人差もあるだろうが、「一生現役」と考える人も少なくない。
「老いの兆候があると、ものすごくショックを受けたり、それを自分で否定しようとしたりする人は少なくありません。そして、『いっそのことここで命を絶って終わりにしたほうがいい』『老いていく自分を自分で認められない』と考えてしまう」(香山氏)
それではどうしたらいいのか。
「エイジング(加齢)によって、体に痛みが出てきて動かしにくくなる。元気で明るくと思っていても、気分が上向かないこともある。肉体は衰え、気力もなくなって、記憶も低下するというのは、ある意味では自然の摂理です。いつまでも若い時みたいに元気で明るくいられるわけではありません。難しいことですが、そういう現実を少しずつ受け入れていくことが大切だと思います」(片田氏)
いくつになっても元気で若々しく美しい人というのはいるものだ。
「それは素晴らしいこととは思うんですけど、やっぱり60代、70代ということを自分で認めて、あんまり無理せずに老いていってもいいんじゃないかと思います。老いていく自分も面白いんじゃないの、と思います。うまく、老いというか老人に着地していくことも必要なんじゃないかと思います」(香山氏)
今回は60代の芸能人の急死が続いたが、男女差はあるのだろうか。
「どんな国でも、どんな文化でも、どんな時代をとっても、男性の自殺率が女性よりたいがい高いんです。これは男性の方が喪失体験に対して脆弱だからです」(片田氏)