上島竜兵さん(左)と渡辺裕之さん
上島竜兵さん(左)と渡辺裕之さん
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 ダチョウ倶楽部のメンバーで、お笑い芸人の上島竜兵さんが5月11日未明、死去したことがわかった。その約1週間前の3日には、俳優の渡辺裕之さんが、横浜市の自宅で急死したと発表されたばかり。

【写真】上島竜兵さんが残した「山ねこ」のボトル

 10日、渡辺裕之さんの妻で女優の原日出子さん(62)は、所属事務所の公式ホームページを通じてコメントを発表した。

「(夫は)『眠れない』と体調の変化を訴えるようになり、自律神経失調症と診断され,一時はお薬を服用していましたが、またお仕事が忙しくなって、元気を取り戻したようでもありました。しかし、少しずつじわじわと、心の病は夫を蝕み、大きな不安から抜け出せなくなりました」

 なぜ、このような悲しいことが起こるのか。上島さんは61歳、渡辺さんは66歳。両者とも60代の男性で、仕事も続けていたなど共通点は少なくない。

 精神科医の片田珠美氏はこう語る。

「一般的に60代になると初老期うつ病を発症しやすいと言われています。これは50代から60代半ばの初老期に発症するうつ病で、何らかの喪失体験がきっかけになることが多い」

 喪失体験とは、本人が大切なものを失ったと感じて「自分はもうダメだ」と思い詰めるような体験だという。

「例えば、コロナ禍の影響で経済的損失があったのならば、それは喪失体験です。思い通りに体が動かせなくなったとか、理想とする体形ではなくなったとかいう場合も、喪失体験と受け止められやすい」(片田氏)

 精神科医の香山リカ氏も、「60代の初老期うつ病というのはけっこう起きやすいものです」と語る。

「60代で、それまで社会的にも活躍していたような男性だと、年齢的にも体力的にも、これからだんだんと高齢者になっていく中で、どのように自分を高齢者として着地させていくのかが大きな課題になります」

 周りから「明るくて元気でタフ」、「頼りがいがある」、「いつまでも若い」というイメージで見られている人ほど、「老いてきた自分をなかなかみせられない」という葛藤が生じやすいという。

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老いていく自分を自分で認められない