歯科医院の定期検診で、「歯みがきはよくできていて、問題はありませんね」と言われたけれど、実は冷たいものを食べたりすると歯がしみる……。このような人はけっこういるのではないでしょうか。これはなぜでしょうか? 歯科医院がむし歯や歯周病を見落としているのでしょうか? 若林健史歯科医師に聞きました。
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むし歯や歯周病がなくても歯がしみること、実はけっこうあります。
このことをお話しする前に、まずは、歯がしみるメカニズムを紹介しましょう。歯は外から白くて硬いエナメル質、黄色い象牙質、中心は神経や血管が通る歯髄(しずい)の3構造になっています。象牙質には象牙細管という無数の細い管があり、歯髄とつながっています。このため象牙質に伝わった刺激が神経に伝わると、しみたり、痛みが起こったりする仕組みになっています。
さて、むし歯や歯周病がないのに歯がしみる理由として、よくあるのが、歯ぐきがなくなり、歯の根元が見えている場合です。年をとると歯ぐきが退縮し、痩せるので、このような人はけっこういます。
歯の根元はエナメル質がなく、セメント質というやわらかい組織で覆われています。そのすぐ下に象牙質があるので、ここが露出しているとちょっとした刺激でしみやすいのです。なお、歯みがきを強くしすぎて歯ぐきが退縮してしまった場合も、このようなことが起こります(次回で詳しく取り上げます)。
もう一つ、歯ぐきがちゃんとあるのに歯がしみる場合は、くいしばりや歯ぎしりが原因であることが多いです。
くいしばりや歯ぎしりの習慣が続くと、歯に力がかかり、エナメル質にひびが入ります。これが続くとひびが入ったところから少しずつ歯が欠けてきます。欠けた部分に気づかないまま、歯ブラシでゴシゴシとかきだすと歯がさらに欠け、くさび状に穴が開きます(くさび状欠損といいます)。
歯の上部でこうしたことが起こっても、象牙質まで距離があるので、簡単にしみることはありませんが、歯の根元に近いところで起こると象牙質に近いために症状が出やすくなるのです。