週刊朝日2022年5月27日号より
週刊朝日2022年5月27日号より

「多くの場合は『挙筋腱膜前転法』という術式によって、緩んでしまったまぶたの筋肉の連結を復元する手術を行います。手術時間は、両目で1時間くらい。眼科でも形成外科でも手術は可能です」

 気になる費用だが、健康保険が適用された場合は、両目で総額15万円程度。自己負担額(3割の場合)は5万円弱くらいとなる。一方、自費診療の場合は35万~70万円と、病院によってばらつきがあるのが実際だ。

「保険の適用条件は、医師によって『病的である』と診断されることですが、実は厳密な基準はありません。年代や身体的特徴によって個体差が大きすぎて、数値基準を作るのは難しいのが実情です。身体からのサイン(例:片方の眉毛が異常に高く上がっている、黒目にまぶたが深くかぶさっているなど)が確認される場合や、目の大きさに明確な左右差が認められる場合などは、保険適用になる可能性も高いと言えます」(金沢医師)

■生活習慣病で進行することも

 また、手術をすると少なからず見た目の印象が変わるため、「二重の幅をこれくらいの広さにしたい」「同時に皮膚のたるみを取りたい」といった細かい要望がある場合は、自費診療で対応することになるという。

「保険で対応できるのは、あくまで機能回復の範囲にとどまります。実は、手術ではここがいちばんトラブルになりやすい。最終的にどのような形に落ち着くかは、ダウンタイムを終えた後でなければわかりません。また、そのシナリオも無数にあり調べきれないため、生じた結果を受け入れる心の余裕も必要です。想定外のことが起きたときのアフターケアについても、あらかじめ調べておいたほうがいいでしょう」

 手術では、まぶたの皮膚を切開する。傷痕は、二重の谷間に入り込むので目立たない。術後1週間は入浴(シャワーはOK)や激しい運動など、顔が火照(ほて)るような行為は控えたほうがいいが、メイクは傷に直接触れなければ次の日からOKだ。

「大体、術後1週間で抜糸しますので、その後は内出血などがひどくなければ見た目も問題なく生活できます。目の腫れが引くのに大体1カ月、完全に目のむくみが落ち着くまでには大体3カ月ほどかかりますね」(金沢医師)

 金沢医師は、35歳のときに自身も眼瞼下垂の手術を受けたが、そのきっかけは担当した患者さんから様々な声が寄せられたことだったと話す。

「肩こりや頭痛だけでなく、呼吸がしやすくなった、不安障害が治ったという方もいました。ある50代の女性は、週に3回マッサージに通っていましたが、背中の筋肉がこり固まってしまい夜中に目が覚めるくらい息苦しかったそうです。それが眼瞼下垂の手術をした途端、背中がすごく楽になったと連絡をくださいました。その女性は目の大きさに左右差があったので、すぐに眼瞼下垂だとわかったのですが、そうした自覚がなくても肩や背中の不調が続いているようであれば、眼瞼下垂を疑って病院で診てもらってもいいかと思います」

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