週刊朝日2022年5月27日号より
週刊朝日2022年5月27日号より

「原因として多いのが、ハードコンタクトレンズの使用やアイメイクです。まぶたの筋肉はとても薄いため、繰り返し強くこすったり引っ張ったりすると、筋肉が周囲の組織から外れる形になり、まぶたが下がってしまいます。それから、顔のマッサージも方法によっては要注意です。シワやたるみをなくそうとして、おでこや顔の皮膚を手で引っ張る方がいますが、逆に筋肉や皮膚がのびて、たるんでしまう危険のほうが大きい。まぶたの筋肉を鍛えることはできないので、眼瞼下垂を防ぐには、とにかくまぶたに負担をかけないことが第一です」

■不眠や抑うつの原因にもなる

 勝村医師によると、眼瞼下垂の初期には「まぶたが重く開けづらい」「目がかすむ」「上のほうが見えづらい」といった症状が出ることが多いそうだ。さらに病状が進行すると、外見が変化して常に「眠そうな目」になったり、涙が出続けて視界がぼやける「流涙」症状が出たりする。

「また、眼瞼下垂になると、無意識に眉毛を上げておでこの筋肉(前頭筋)を使ってまぶたを上げるようになります。これにより顔から首にかけての筋肉が緊張してしまい、頭痛や肩こりといった症状が出ることもあります」

 こうした症状に加えて、勝村医師が診察した中には、眼瞼下垂の治療によって精神的な落ち込みや不安が解消されたケースもあったという。

「実はまぶたの開閉は、自律神経にも少なからず影響しています。特に更年期にあたる50~60代の女性の方は、不安やいら立ち、抑うつ、不眠といった症状が出ることがありますが、その原因として眼瞼下垂が潜んでいることもあるのです」

 ただし先述したように、眼瞼下垂は加齢とともにゆっくりと進行することが多いため、なかなか自覚することが難しい。簡易的なセルフチェックとしては、おでこを指で押さえる方法がある。

「眉毛の上あたりを両指でぐっと押さえて、おでこの筋肉を静止させた状態でまぶたをパチパチしてみてください。目が開きづらかったり、開いても黒目にまぶたがかかっている場合は、眼瞼下垂の可能性があります」(勝村医師)

 では、眼瞼下垂になってしまったら、どのような治療が必要になるのだろうか。

 眼瞼下垂治療を専門に行う形成外科医で、眼瞼下垂情報サイト「まぶたのお医者さん」を運営する金沢雄一郎医師は、「現状では、根治するには手術しか方法はない」と話す。

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