とはいえ、均等法世代の女性が働き続けるための課題は子育てだけではない。来年中に定年を迎える、上場企業に勤めるナホコさん(仮名=59)は、40代のころにキャリアを生かして転職を考えたが実現できなかった。

「出世がしたいわけではなく、もっとキャリアを生かせる仕事をと考えて転職市場にアクセスしてみたのですが、女性の転職、しかも40代となるとほとんどありませんでした。担当してくれたリクルーターの方も、女性の転職案件はほぼないと言っていました。そんななかでも1社だけ紹介してもらい、面接まで行ったのですが、これなら今のままのほうがいいと考えて諦めました」

 ナホコさんが入社した当時は女性社員の数そのものが少なかった。

「最初の10年くらいは職場に女性の先輩がいなくて、モデルになる女性もいなくて苦労しました。私は抵抗なかったですが、お茶くみもしました。職場で男性社員たちが平気で猥談をしている姿も見ました。今はお茶も給湯器ですし、猥談はもってのほか。女性の転職もだいぶ門戸が開けてきたと思います」

 定年後は収入の不安があるので引退せず、雇用延長して働くつもりだとナホコさんは話す。

「制度としては70歳でも働ける会社なので、65歳以降も体力的に可能ならバイトみたいなスタイルでペースダウンしてでも働きたいです。まさか自分が定年まで働き続けるなんて、若いころは思ってさえもいませんでしたけどね(笑)」

 花も嵐も踏み越えて定年まで働く女性たち。タフさでは間違いなく男性を上回っているようだ。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2022年5月27日号