内閣府男女共同参画局の2018年のレポートでは、キヨミさんの出産時は、妊娠前に退職する事例が約33%、第1子出産退職が約39%、出産後も就業を継続する割合は約24%。それが最新の10~14年データでは、それぞれ24%、34%、38%になっている。出産後も仕事を継続する割合は高くなったが、第1子出産を機に退職する割合はほぼ変わらず高いままだ。

「雇用機会は均等だったかもしれないけど、継続勤務機会は均等ではなかったということ。女性活躍社会と言ったって、そこが変わらない限り実現は難しいと思う」

 そう話すキヨミさんが係長に昇進したのは50代になってから。子供が高校に入学し、子育てから解放された後だった。定年後のことは深く考えてはいないが、再雇用制度を利用して勤め続けるつもりだという。

 子育てという女性の就業継続を困難にする“壁”を越えたのは中部地方の設備メーカーで取締役を務めているキョウコさん(仮名=61)だ。学生時代に中国に留学し中国語を習得し、就職後は上海支社に赴任した。20代から30代にかけてのころは失敗や挫折の連続だったが、上司に励まされてグローバル企業との契約を勝ち取るなどして会社に貢献した。ハードワークを続けてきたキョウコさんだが、働きながらしっかり子育ても終えた。

「上海では女性が働くのは当然で、当社ではトップマネジャーの4割が女性です。それができるのは女性が働く環境が整っているから。育児は両親や夫がサポートしてくれる文化があるし、家事はワーカーさんを手軽にアプリで雇うことができる。お金は多少かかりますが、退職して子育て後に非正規で働く場合よりも、働いていたほうが生涯収入はずっと多い。日本で働いている友人たちの話を聞くと、こうした環境が整っていない日本の女性はかわいそうだと思います」

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 キョウコさんは、定年後には日本の女性を支援する子ども食堂のようなことをやりたいと計画を立て、資金まで準備したがコロナ禍で延期。監査役として会社に残ることを選択した。それでも女性活躍のための活動は継続する予定で、「女性も定年まで働けるため、私にできることをこれからも続けていきたい」と言う。

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