■若林の魅力は「後ろめたさ」

 コンビとしての転機は2019年。春日は11年交際した一般女性と結婚。交際を若林にも隠していたことや、プロポーズ直後に写真週刊誌に浮気現場を撮られるスキャンダルもあった。その後、若林も15歳年下の一般女性と入籍していたことを発表。こちらも春日に一切、報告していなかったことが話題となった。

 現在「あちこちオードリー」(テレビ東京)などを手掛け、今も2人と親交の深い元テレビ東京の佐久間宜行プロデューサーは関西のローカル番組で「オードリーは結婚してから(タレントとして)もう一段上がった」と発言。結婚という人生の分岐点が、今の2人の活躍にポジティブな影響を与えているというのだ。スポーツ紙の芸能担当記者はこう言う。

「佐久間さんは売れる芸人の三大条件として『ネタと愛嬌と信用』とも言っているのですが、オードリーの2人はネタと愛嬌が100点で、ほぼ同時期に結婚して子どもにも恵まれ、結果的に周りからの信用も得ることができた。これは、たしかに今の2人の活躍に直結していると僕も思いますね。キワモノコンビとして世に出てきた2人が意外とテレビに順応し、いつしかMCまでするようになりました。ネタは『爆笑問題の検索ちゃん』などでも新作漫才をほぼ毎年おろしていますし、愛嬌は今も昔もしっかりある。つまり、信用だけが伴っていなかったわけですが、気づけば2人とも結婚して父親になった。この三大条件を満たしているコンビは、最近で言うと千鳥さんやかまいたちさんもそうです。つまり、オードリーはここからさらに売れる可能性が高いと言えます」

 お笑い評論家のラリー遠田氏はオードリーの2人の持つ才能についてこう述べる。

「若林さんの芸人としての魅力は、大喜利力やトーク力が高く司会進行も器用にできるにもかかわらず、真正面からテレビの仕事をすることに対して、どこか後ろめたさや違和感のようなものを持っているところです。普通の芸人であれば、テレビに出るようになってしばらくたつとその違和感を忘れてしまうものですが、若林さんはいつまでもそれを引きずっていて、ラジオ番組や執筆業ではそんなナイーブな部分を生かした仕事をしています。芸人やタレントの普段は言わない本音が漏れるトーク番組『あちこちオードリー』でも、若林さんのそんな資質が生かされています。一方の春日さんの魅力は、テレビで“春日”というキャラを貫いているところでしょう。どんなに過酷な企画であっても音を上げずに、淡々と挑戦を続けていけるのは、彼のそんな覚悟が尋常ではないものだからです」

 家庭を持ったことで、むしろ芸人としての幅を広げた若林と春日。これから、オードリーの「第2章」が始まりそうだ。(藤原三星)

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藤原三星

藤原三星

ドラマ評論家・芸能ウェブライター。エンタメ業界に潜伏し、独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を書き続ける。『NEWSポストセブン』『Business Journal』などでも執筆中。

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