廣津留すみれさん(撮影/戸嶋日菜乃)
廣津留すみれさん(撮影/戸嶋日菜乃)
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米・ハーバード大学とジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(28)。現在はコンサートなどの音楽活動を行いながら、日本の大学でグローバル人材を育成するための授業も受け持っている。廣津留さんの頭の中を探るべく、どんなふうに音楽や勉強とかかわってきたのかを語ってもらうAERA dot.連載。第8回は、ハーバードに集まる学生たちやお金の考え方について。

【写真】はハーバード大の寄付者や関係者の集まるイベントで演奏する廣津留さん。

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 環境に恵まれた“特別な人間”だけが通っていると思われがちなハーバード大学。しかし、実際は普通の家庭で育った人も多く、さまざまな家庭環境の学生が一緒に学ぶことで多様性が生まれている。

 「ハーバードにはハリウッドスターの子どもや、名家出身のセレブのほか、海外の大物政治家の子どもが名前を変えて入学していたりと、驚くような素性の学生たちがいます。それまで大分の高校の友達しか知らなかった私にとっては新鮮でした。一方で、もちろん、普通の家庭で育った人もたくさんいます。家が裕福ではないために、全額奨学金を受けて、さらに学校内のイベントのチケットも支給されている学生や、いわゆる“ファースト・ジェネレーション”と呼ばれる、家族の中で初めて大学に進学する学生もいます。

  学内紙の『ハーバード・クリムゾン』が毎年統計を出していて、たとえば2021年入学の学生は約55%の人が奨学金を受けているというデータがあります。ハーバードで学びたいと願う人には、平等に機会が与えられるよう大学側が支援することで、収入や人種、国籍に伴う格差を是正し、多様性が生まれるように努めているのです。なお、同年の入学者のうち、20%にあたる学生が“ファースト・ジェネレーション”です。

 受けられる奨学金の金額は個々の世帯年収や特別な才能などによって異なりますが、私も大学から寛大な奨学金を受け取っていました。驚いたのは、提示された奨学金の額をそのまま受け入れるだけではなく、学生が学校側に学費を“交渉”することでした。家庭の事情を説明して学費を値切ることも珍しくありません」

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プレゼンをして補助金を交渉