2017年の発売以来、重版を続け5万部に迫った帚木蓬生さんの著書『ネガティブ・ケイパビリティ』(朝日選書)。本書が説く、「生きやすくなる」考え方とは
2017年の発売以来、重版を続け5万部に迫った帚木蓬生さんの著書『ネガティブ・ケイパビリティ』(朝日選書)。本書が説く、「生きやすくなる」考え方とは

――ネガティブ・ケイパビリティは、2020年から再び、引き合いに出されることが多くなりました。全国紙の記事検索をしてみると、ネガティブ・ケイパビリティという言葉が出てくる記事の件数が多いのは、ご著書『ネガティブ・ケイパビリティ』が出た2017年よりも、2020年なのです。
 この年の4月に最初の緊急事態宣言が出されて、5月にすぐ「コロナ禍を生き抜く 答えなき不安に耐える」という帚木さんのインタビューが読売新聞に載りました。朝日新聞の「論壇時評」でジャーナリストの津田大介さんは、2020年の1月と12月の2回、ネガティブ・ケイパビリティに触れています。1月は芸術の話でしたが、12月は、コロナ禍と、不寛容と分断が進んだ一年をふりかえって、危機の時のネガティブ・ケイパビリティについて書いておられました。

 そういうのは、初めて知りました。

 即断即決とはいかないからだと思います。先が見えない、わからないなかで、すぐに答えを出さなくてもいいというこの概念を知ることで、ホッとするのではないでしょうか。迷い、揺れ動きながら、問いを発しながら生き続ける知恵、ですからね。ネガティブ・ケイパビリティは。

――また、今年、私たちは、ウクライナの危機を目にして、心穏やかではいられなくなりました。毎日のように、爆撃の様子や悲しみや恐怖に触れて、つらくなった人たちもいます。しかもこの戦争がなかなか終わらない。このような場合にも、ネガティブ・ケイパビリティは、何か私たちの力になってくれるでしょうか。

 そうですよねえ……。

 ネガティブ・ケイパビリティは、英語で言うと“stay and watch with wonder”、つまり、興味を持ち続けて、踏みとどまって見続けることですから。その心で見ていればよいんじゃないですかね。

 コツコツと日常生活をしながら、踏みとどまって見続ける、問い続ける。“do the right thing”正しいことをしながら。それでいいんじゃないでしょうかね。悪いことは長続きしませんから。そう思います。

(取材・文/河原理子)

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