泥沼化しつつあるロシアによるウクライナ侵攻。ウクライナ軍の各地での奮闘は称賛に値するものの、かといって、国際社会はこのまま双方の命が失われ続けることを容認していいのか。本当に停戦という選択肢はないのか、今一度考えてみたい。
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戦闘が長期化しつつあるウクライナ情勢だが、日本はNATO(北大西洋条約機構)諸国と歩調を合わせ、ロシアへの経済制裁を実施している。
岸田文雄首相は19日、ウクライナを支援するためにこれまで3億ドル(約380億円)の借款を行っていたが、倍増してさらに3億ドルを追加支援することを表明。記者団にこう語った。
「わが国は祖国のために奮闘するウクライナとともにある。今後もG7、国際社会と連携しながら強く支援していく」
岸田首相は23日の日米首脳会談でもこうした方針を打ち出す。ウクライナを支援するムードが高まるなか、当初あった「即時停戦」という選択肢は遠のいているようにも見える。
「このままでは、無辜(むこ)の市民がどんどん犠牲になっていきます。国際社会の責務は、一刻も早く戦闘を停めさせ、これ以上の犠牲者を出さないということに尽きます。ロシアに対しても、命令で戦場に駆り出された若い兵隊たちがこれ以上、死なないで済むようにすることを優先すべきではないでしょうか。日中戦争当時、中国を懲らしめるという意味の『暴支膺懲(ようちょう)』というスローガンがありましたが、いま永田町ではロシア非難一色で『暴露膺懲』の様相になっています。ロシアの行為は厳しく非難されるべきですが、それは人命が失われる事態を防いでからでも可能です」
戦局は転機を迎えている。最大の激戦地となったウクライナ南東部の要衝、マリウポリが事実上、陥落。現地の製鉄所に立て籠もって抗戦していたアゾフ連隊を中心とする戦闘部隊の多くは投降し、ロシア側の拘置施設に移送されたとみられている。