第2次世界大戦でソ連軍と戦ったフィンランド兵(写真:Gamma-Keystone via Getty Images)
第2次世界大戦でソ連軍と戦ったフィンランド兵(写真:Gamma-Keystone via Getty Images)
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 ロシアによるウクライナ侵攻から約3カ月。当初は圧倒的に有利だとされていたロシア軍の苦戦が続いている。今後の戦況の見通し、そして戦争後のロシアの未来はどうなるのか。AERA 2022年5月30日号で専門家が解説する。

【NATOの東方拡大の歴史はこちら】

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 フィンランドは5月18日、スウェーデンとともに北大西洋条約機構(NATO)に加盟を申請した。これまでNATOにも、ソ連側のワルシャワ条約機構にも加盟せず中立を保ち、経済発展、教育、福祉などで世界の模範とされてきたフィンランドが米国主導の軍事同盟に加わる決意をしたことはロシアのウクライナ侵攻が欧州に与えた衝撃の強さを示し、他の地域の安全保障政策にも影響しそうだ。プーチン大統領はウクライナのNATO加盟を阻止するために戦争を始めたが、逆にフィンランド、そしてスウェーデンのNATO加盟を推進し、藪(やぶ)をつついて蛇を出す結果となった。

 だがなぜ今フィンランドがNATOに入る必要があるのか、奇異な感じもある。もしロシアの軍事力が強大化し、フィンランドなどが脅威にさらされているならば、人口550万人の小国がNATOに頼ろうとするのは自然だ。だが実際にはロシア軍はかつての衛星国ウクライナに侵攻して苦戦し弱体を露呈している。

■苦戦が続くロシア軍

 ソ連崩壊の時点で140万人だったロシア陸軍は28万人(陸上自衛隊の2倍)に減り、別組織の空挺(くうてい)軍と海軍歩兵を加えて地上戦兵力は36万人。ウクライナには陸軍15万人が侵攻、分離派民兵4万人が協力している。他方ウクライナ陸軍は12万5千人だが、空挺軍、海軍歩兵、国家防衛隊、国境警備隊を加えると25万人余だ。

 ウクライナはソ連時代からミサイル開発、生産の拠点でレーザー誘導の対戦車ミサイル「スタグナ」を国産しており、米国の「ジャベリン」約7千発などの供与も受けていたからロシアの戦車、装甲車は大損害を受けた。ロシア軍は首都キーウ制圧を目指したが、人口約300万人の都市での市街戦は危険だから包囲して兵糧攻めで降伏させようとした。だがウクライナ軍の頑強な抵抗で交通に最重要の同市の南側面の封鎖に失敗した。ロシア軍はキーウ攻略を諦め南部の港町マリウポリに向かったが制圧に2カ月以上がかかり、黒海艦隊旗艦「モスクワ」がウクライナ製の対艦ミサイル「ネプチューン」で撃沈されたり、開戦から2カ月半に将官12人が戦死したりする苦戦が続いた。

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