用具をすべてそろえなくても野球は始められる。写真はイメージ
用具をすべてそろえなくても野球は始められる。写真はイメージ

子どもたちの「野球離れ」が危惧されている。その要因の一つによく挙げられるのが、「サッカーやバスケに比べ野球の用具は高い」という親の声だ。たしかに、バットやグローブ、ユニホーム、スパイクなど一式をそろえると、費用はかさむイメージはある。ただ、関係者に話を聞くと「何をいくらで買えばいいのか、実際の金額がよくわかっていないのに、高いというイメージだけで二の足を踏んでいる親が少なくない」という声も。実際のところ、最初に何を買う必要があり、いくらかかるのか。他のジュニアスポーツと比べるとどうなのかを比較してみた。

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 大前提として、本当に子どもの「野球離れ」は深刻化しているのか。まずは、公表されているデータを見てみよう。

 全日本軟式野球連盟に登録している学童(小学生)野球のチーム数は、2011年度は1万4221あったが、2021年度は1万229に減少した。日本中学校体育連盟(日本中体連)によると、21年度の軟式野球部の部員数(男子)は14万4314人と、11年度の28万917人から半分近くに減っている。

 この減少ぶりを見ると驚く人もいるかもしれないが、あくまで軟式野球の話。小中学生は硬式野球チームで活動していることも多いため、子ども全体の野球人口減少を示す正確な数字ではない。

 また中学の他競技(男子)で11年度と21年度の部員数を比較すると、人気と言われるサッカーも23万7783人が15万8337人と約8万人、バスケットボールも17万8468人が15万4011人と2万5千人近く減少している。少子化も大きく影響していると考えられ、野球の独り負けとは断定できない。

 それでも、子どもの野球離れに危機感を抱く関係者は多い。その理由によく挙げられるのが「用具の高さ」だ。

「小学生がスポーツを始める時にかかる用具のお金としては、野球はサッカーなどに比べれば確かに高いと思います。ただ、すぐ買う必要がない用具まで買わなきゃいけないと勘違いされていたり、チームが貸し出してくれることを知らなかったりと、実際にかかる金額より高いと思い込んでいる親御さんが多いとも感じています」

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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