今年の入試結果と10年前(早稲田、慶應は5年前)を「大学通信」の協力を得て比較した。難関20大学の合格者数ランキングで、東大合格者数が急上昇中の「県立横浜翠嵐高校」に着目し、その合格力の理由を探った。AERA 2022年6月6日号は「大学」特集。
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JR横浜駅からバスで約15分。横浜港を見下ろす高台に、2014年に開校100周年を迎えた伝統校の県立横浜翠嵐高校がある。
今年の東大の現役合格者数は、44人で全国10位にランクイン。もともと県内有数の進学校ではあったが、00年の東大合格者数は1人。10年前の12年は7人に伸びたが、ベスト10に遠く及ばない66位だ。着実に力をつけ、今や開成、桜蔭といった私立の名門校や都立トップ校の日比谷に引けを取らない存在感を放つまでになった。
進学実績の躍進を支えているカリキュラムの完成度は、圧倒的だ。
「覚悟」もって入学を
まず、入学が決まった中学3年生を「0(ゼロ)学年」とし、3月の入学者説明会で意識改革を呼びかけるところから始まる。配られる資料には「横浜翠嵐高校1年生としての『覚悟』をもって入学してきてください。中学時代と同じ気持ちでは、本校の学習・生活を進めていくことはできません。(中略)意識を変えてください」と大きく書かれている。「覚悟」は赤字だ。
この資料がSNS上で「翠嵐予備校」などと大炎上したこともあるが、ガイダンス(進路指導)グループリーダーの中村悠人総括教諭は、「勉強漬けの3年間になるなんて書いてないんですよ。ただ、進路の7割は1年生で決まる。中高一貫校と同じ土俵にあがるわけですから、初動がすべて。1年生の期間をうまく使うことで、進路実現につながるのは間違いありません」
同校が目安として掲げる学習時間は、平日は「学年+2時間」、休日は「学年+4時間」。塾や予備校で「人に教わった時間」は含めず、あくまで自分で勉強した時間をカウントする。それを「知層」と名づけたシートに毎日記入して、学習時間の「見える化」を図る。