部活動に起因するストレスから、うつ病になった教員もいる。三重県の公立高校に勤務する30代の男性教員は、他の業務に忙殺され、部活動にあまり顔を出せずにいたところ、部活動が好きな教員たちから「嫌がらせ」を受けた。

「なかには僕が顧問をする部の生徒たちに僕の悪口を吹き込み、反発するように仕向けてくる人もいた。わざと生徒たちの前で僕を怒鳴りつけ、変なあだ名で呼んだりするのです」

 運動部の顧問だったときは体育の教員から、指導にもっと身を入れなければ体育館を使わせないと脅された。

 練習ができなければ困るのは部員たちだ。やむなく練習を増やして、体育館を確保した。部活動が終わった後に、授業の準備を始めるため、退勤はいつも22時をまわる。時間外労働は少ないときでも月150時間を超えた。

 男性教員はうつ病になり、休職寸前の状態で仕事を続けた。4年前に希望して特別支援学校に移り、現在は部活顧問を離れている。

 任意であるはずの部活動に打ち込まない教員は、なぜこんなに他の教員から「いじめられる」のだろうか。

 名古屋造形大学の大橋基博特任教授(教育行政学)は「現場で力を持つ50代前後の先生たちは『若い頃に部活動で生徒を指導してきた』という強い自負があり、若い教員が部活動をやらないことを許しがたく感じる傾向がある」と指摘する。

 そのため長い間、誰も声をあげられなかったが、最近は教員の勤務の過酷さや部活動の問題が世間に認識され、ようやく顧問拒否という行動をとれるようになったと大橋教授はみている。(ライター・大塚玲子)

AERA 2022年6月6日号より抜粋

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