オーバーワークの教員に部活動顧問の負担がのしかかる(撮影/今村拓馬)
オーバーワークの教員に部活動顧問の負担がのしかかる(撮影/今村拓馬)
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 部活動の顧問は任意にもかかわらず、積極的ではない教員は他の教員からいじめを受けるケースもある。部活動に苦しみ続けた末に、顧問拒否を選択した教員もいる。現場の声を聞いた。AERA 2022年6月6日号の記事から紹介する。

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 多くの中学や高校で、生徒は部活動への参加が、教員は顧問となることが当たり前とされてきた。だが、部活動は学習指導要領に「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と記されており、本来は強制すべきものではない。このことが知られるようになり、最近は顧問を要請された際に、断る教員が現れている。

「この9年間ずっと部活動顧問に苦しんできた」と話すのは兵庫県の30代男性教員だ。公立高校に勤務しており、今年度から顧問の拒否を始めた。

 初任校でバスケットボール部の主顧問を頼まれた。週末の休日を確保しつつ、副顧問と交代で練習を見ていたら、怒りだしたのは生徒でも保護者でもなく他部の顧問の教員だった。

「練習時間をもっと長くしろ」「顧問が2人いるなら2人とも毎日部活を見るべきだ」

 休日に部活を休みにすれば必ず「どこで何をしていたのか」と聞かれる。

 干渉してくるのは部活指導をしたくて教員になった人ばかりで、皆で部活動に関心が薄い教員の陰口を言うのが常だった。男性教員は次第に休みをとりづらくなった。

 剣道部の副顧問をした際は、検定試験や受験を控える生徒の補習授業を優先した。主顧問の教員から「全然練習に来ない」と皆の前で文句を言われた。

 補習授業をしていたのを知っている教員まで「練習に来ないのはよくない」と主顧問に同調したことも、男性教員の胸をえぐった。補習授業は進学にかかわる大事な仕事だが、部活動のほうが、はるかに重視されていた。

 2校目ではバレーボール部の主顧問を押し付けられた。着任早々、間近に迫った公式試合で審判をするよう求められた。

 急いでルールブックに目を通したが、何しろ経験がない。試合でミスジャッジをするたびに生徒たちからブーイングや嘲笑が起こり、他校の顧問たちからも露骨に嫌な顔をされた。ただ耐えるしかなかった。

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