AERA 2022年6月6日号より
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 ロシア軍がウクライナに侵攻して3カ月経ち、戦いは長期化の様相を見せている。米国を中心に軍事支援が続く。それは軍需産業の利益にもつながる。AERA 2022年6月6日号の記事から紹介する。

【図】米国の軍需産業3社の株価の動き

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 オースティン米国防長官は4月25日、「ロシアを弱体化させることを望む」と発言し、力による国際秩序の変更に断固とした姿勢で臨むことを明らかにした。実際にロシアは、実効支配地域で通貨ルーブルの流通などのロシア化を進めていく動きを見せている。

 一方で、元外交官で外交評論家の孫崎享さんは「軍事支援は『軍需産業が潤うから』も理由の一つです」としたうえで、バイデン政権のある「事情」についてこう話す。

「20年の米大統領選で、バイデン氏を強力に支援したのが国防総省と軍需産業、その関係者でした。『海外の米軍基地は不要』など海外への軍事活動に消極的だったトランプ氏を当選させたくなかったからです。その結果、バイデン政権には安全保障上のタカ派の人たちが中核に入ってきてしまった。これまでのどの政権よりも軍需関係者の影響力の強い政権であり、それが継続しているんです」

AERA 2022年6月6日号より
AERA 2022年6月6日号より

 孫崎さんには忘れられない言葉がある。1961年1月、当時のアイゼンハワー大統領が退任演説で述べた「軍産複合体が米国民の利益に反する行動をとらないか警戒していく必要がある」という言葉だ。

「リベラルな政治家がこれを言うならわかる。アイゼンハワーは第2次世界大戦の欧州戦線の総司令官であり、軍事的に米国の中で一番尊敬されている人間。その人が離任前にわざわざ国民に軍産複合体の危険を訴えた。そこが重要です。残念ながら、彼が危惧した状況がいまも続いているということです」

 そのような米国の状況は、いつから生まれたのか。「第2次世界大戦が大きな転機だった」と話すのは、現代イスラム研究センター理事長で『軍産複合体のアメリカ』の著書がある宮田律さんだ。

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