復帰した72年に出した平山良明の第一歌集名は「あけもどろの島」。あけもどろとは太陽の光が射(さ)す明け方を表す。「沖縄は不思議な島だ」と平山さんが言う。「強い支配者が現れても、決して太陽の魂を売らなかった」
復帰後半年も経たないうちにB52が次々に飛来、北爆に使われた沖縄はベトナムの人たちに「悪魔の島」と呼ばれた。
「人間の血を吸い尽くしたる土地にして黒い尾翼の構図となれり」
「黒い尾翼はB52。尖(とが)った尾翼を見上げていた。よくも共産党に入らないで頑張ってきたものだ」と平山さんは回想する。
「断たれたるトカゲの尻尾のように生くる沖縄島の歴史をいたむ」は、本土と分断され、トカゲの尻尾のように本島の人たちは生きたという歌。平山さんは自らの思いを詠み続けた。「歌が心を浄化してくれる。やはり許さないと。真実であっても許さんといかんさ。しかし、忘れてはいけない」
短歌で綴る沖縄の旅は終わらない。僕たちは平山さんより2世代下の歌人、屋良健一郎さんを訪ねた。(次号に続く)
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞。新刊「松本隆 言葉の教室」(マガジンハウス)が好評発売中
※週刊朝日 2022年6月10日号