さらに、紅野氏はこう続ける。
「いまとは違って、これまで日大はそれぞれの学部に個性があった。それが田中前理事長のときに、弱くなってしまった。林さんにはボトムアップの思想を実践して、現場の声を聞いてほしい。そして総合大学としての多様性を復活させてくれることを期待しています」
紅野氏は、次期学長が酒井健夫元総長に決定したことにも触れ、新理事長の役割の大きさを強調する。
「いままでも総長や学長に医歯薬系や理工系の方がなっていて、今回も次期学長は生物資源科学部の獣医学という狭い学問領域の方です。これまでも学内の多様性がまったく見えていないと感じていました。なので、新理事長に期待するところは大きいですね」
日大は16学部87学科のほか、短期大学部、通信教育部、大学院19研究科を持つマンモス大学だ。さらには、付属高校、中等教育学校、付属中学校、小学校、幼稚園なども有する日本最大の教育機関だ。
紅野氏は「すぐれた補佐役を集めたり、アドバイザリーボードを設けたりなどして、経営体制を固めることが大事だと思います」と語る。
林さんが選ばれた意義をどう考えているのか。
「運営する能力は未知数ですが、大学のイメージを刷新する存在になると思います。素晴らしい人材が来たとしても、知名度が低ければイメージの一新には時間がかかりますから。その点ではいまの日大にとって、林さんはうってつけの人材です」
また、作家だからこそできることもあると語る。それは“言葉”を尽くした対外的な発信だ。
「田中前理事長は発する言葉が貧しく、あるいは極端に発信の場面を避けていて、秘密主義的だった。林さんは作家という『言葉の人』ですから、言葉を発して説明をしていく、説得する、盛り上げていく役割が求められると思います」
一方、日大OBは、林さんの理事長就任内定をどう受け止めているのか。
「学生をどう味方につけるかが一番重要だと思いますね」