■バイトを転々とする生活 将来の不安が募っていく
中学時代の同級生で親友だった鈴木彩乃は、当時横行していたいじめをこう語る。
「いじめをされていない人はいないんじゃないかというぐらい、ハッピーな人は誰もいなかった。私もターゲットになって、うちのガラスを割られたりして、鉄格子までつけましたから。いじめという領域は超えていたと思う」
一方で、五十嵐の中学時代の成績は、常にトップクラスだった。鈴木が言う。
「授業中はいつも私としゃべっていたし、一緒に遊んでいたのに、いつ勉強したんだろうというぐらい勉強はできた。たぶん、パッと教科書を見てわかっていたんだと思います。文章もすごくうまかったし」
しかし、五十嵐は、中2になってから欠席が目立つようになり、ついには高校への進学も放棄してしまう。昼はアルバイトをし、夜、街を徘徊(はいかい)するという日々の始まりだった。金髪のギャルは悪ぶりながら、10代後半をスタートさせていた。
「ただ、どこかで良識があるから、どんなに悪いことをしようとしても苦しくて、この世界は向いてないな、と感じていました。そんな本当のワルになりきれない自分も嫌でしたね。暴力的なことは本当に嫌いだったし。そう考えると、やっぱり、教育と環境が大事なんですね。どこまで良心を持って生きられるかという」 そんな五十嵐に転機が訪れるのは、チェーンの飲食店でアルバイトをしていた17歳のことだった。正月のシフトを決めるという年末、店長と衝突したのだ。正月に遊びたかった五十嵐は、休みを申請したが認められず、その場で「明日から来なくていい」とクビを言い渡されていた。
「むかついたし、悔しかった。すぐにどうやって闘おうかと思って、労働基準監督署に行ったらいいと知って向かいました。そこでそれは不当解雇に当たると聞き、会社に通知してもらって1カ月分の給料を払ってもらったんです」
そして、この一件は、五十嵐に新たな道を示すことになった。
「そのお金を得たことは成功体験だったし、法律はすごい、と思った。そこで法律に目覚めてしまって、行政書士になろうと思ったんです。もともと何か資格があれば、社会で働けると思ってましたし。もちろん、すぐには無理でしたが」