「小耳にはさもう」に掲載された傑作消しゴム版画(1993年前半)。初回は貴花田だった (c)Nancy Seki
「小耳にはさもう」に掲載された傑作消しゴム版画(1993年前半)。初回は貴花田だった (c)Nancy Seki
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 消しゴム版画家のナンシー関さんが亡くなって、6月12日で20年が経つ。1993年に始まった「週刊朝日」の名物連載「小耳にはさもう」では、お茶の間を賑わすタレントらを素材に、類まれな観察力で小気味よいエッセイを執筆、痛快&爽快な消しゴム版画を添えた。

 移り変わりの激しい“テレビの中”をネタにしながら、自身はテレビの“外の人”として距離を置き、世相をクールにウォッチし続けたナンシーさん。「小耳にはさもう」のベスト版『ナンシー関の耳大全77』(武田砂鉄・編)より、いまなお読み継がれる珠玉の逸品をお届けします。

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「天然と思っている視聴者の方は多いでしょうね。
 実は、相当考えてやってますよ」

松岡修造発言
2001年7月15日 日刊スポーツ「日曜日のヒーロー」から。現役引退後のテレビでの活躍について尋ねられ、答える。
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松岡修造さん (c)Nancy Seki
松岡修造さん (c)Nancy Seki

 衝撃の一言といっていいだろう。修造は計算していたのである。この衝撃のインタビュー、もう少し前後を補足する。「この番組ではどんなキャラクターが求められているのか、考えてから参加してますから。指示されるのではなく、自分で考えてます」だそうだ。さらに「人を笑わすことは昔から好きでした。なぜ今僕が面白いかというと、ギャップだと思うんです。テニスの何となくまじめそうな人が、こういうことを言ったり、やったりするんだと。それがテレビの中では面白く見える部分なんだろうと思います」と自己分析までしてみせている。

 テレビの中の松岡修造がおもしろい確率はかなり高い。でもそれは修造の計算が合っているからではない。どんなキャラクターが求められているかを考えて番組に臨んでいると言うのなら、その考えたキャラがばっちりハマっておもしろいのではなく、「どんなキャラクターでいこうか」と考えていること自体がおもしろいのである。「みんな天然だと思っているのだろうけど、ところが僕は相当考えてやっている」という修造の「自覚」そのものが、いちばんおもしろい。

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しかし、修造のおもしろさはやはり「笑われる」ところにある