昭和大学附属烏山病院の精神科医、常岡俊昭さんは、オンラインギャンブルについて「極めて短期間で破綻するケースが多い」と問題点を指摘する。
パチンコやスロットの場合、遊び始めてから借金に至るまで10年くらいかかる人も多いが、オンラインの場合、1年そこそこで収入に見合わない借金を抱える人が続出しているという。
前出のグレイス・ロードが入所者を調査したところ、パチンコ・スロットにだけ依存していた人の借金残額は平均160万円だったが、それ以外のギャンブルが入ると494万円に跳ね上がった。金額を引き上げたのは、主に公営ギャンブルのネット投票とオンラインカジノだ。
また、常岡さんは、オンラインギャンブルは他のギャンブルに比べて「うつ」を併発しやすいとも感じている。
「24時間遊べるので不眠に陥ったところに、家族への罪悪感や借金苦、『人生は終わった、もう抜け出せない』という絶望感が重なり、重度のうつを抱える受診者も多い。まず『死なせない』ことを念頭に治療しています」(常岡さん)
実際、「考える会」の田中さんは3月以降、月1回のペースで当事者の自殺の報に接した。中にはまだ20代で、幼い子を持つ親もいた。田中さんは言う。
「今はギャンブルを続けていてもいいから、とにかく生きて自助グループにつながってほしい」
(フリーライター・有馬知子)
※AERA 2022年6月20日号より抜粋